ブロ野球書評ニュース

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KEIO革命

江藤省三[2010]『KEIO革命』 ,ベースボール・マガジン社(ベースボール・マガジン社新書)

 著者・江藤省三熊本商京商慶大巨人中日を経て,慶大野球部監督)による「私の履歴書」。元プロ野球選手が東京六大学野球の指導者に就任する意義を展開。

 選手としてはイマイチだった江藤が,アマ野球の指導者として信頼されるのは,その情報収集力にある。小学校から中学校にかけて日記を毎日つけて(66頁),巨人入団後は,出席した全ミーティングの内容をノートに記していた。しかも,キャンプ中には部屋で清書し,カタカナを英文表記に書き直していたという(163-165頁)。「自分の得た情報というのは,整理して文字に改めて目から入れないと身につかないものなのだ」(167頁)という主張にも,説得力が増す。

 往時のエピソードで興味深いのは,実兄・江藤慎一のプロ入団背景。西鉄広島大毎中日の4球団から江藤が選んだのは,トランクに現金1,000万円詰め込んできた地元の西鉄ではなく,一番安い契約金を掲げた中日だった(68-70頁)。時は,西鉄が巨人に日本シリーズ3連覇を果たした1958(昭和33)年。もし西鉄のスカウトが,三原脩監督就任時の如く,江藤を積極的に獲得していたら,その後の西鉄ライオンズの歴史は,もう少し変わっていたかもしれない。

 この図書で一番不満なのは,なんといっても書名である。「KEIO革命」というワードは,慶応のユニフォームのロゴから連想させたのだろうが,読者に何を著した本なのか伝えられていないし,慶応の塾生・塾員に対しても,ピンと来るインスピレーションに欠如している。野球が好きな塾員に読ませたいのであれば,「塾野球部」という表現を用いるか,あるいは「慶応」と漢字表記しないと,財布の紐はそうそう緩まない。

 

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